2018年11月26日月曜日

没小説供養1

 某所に送って没となった、短編小説の供養シリーズその1です。 




「自由労働制度法案の採決を行います」
 議長が言うと、議員一同は投票用紙を持って立ち上がった。もっとも、現状は与党「労働自由党」が多数であり、誰もが法案は可決されると考えていた。
 内閣総理大臣である松元も、用紙を持って投票箱へ向かって歩き始めた。しかし、彼の歩みは極端に遅く、中々投票箱に辿りつかない。松元の牛歩戦術に、議会は騒然としていた。
「流石に、実際は過労死を増やすだけの法案を通すのに罪悪感を感じたか」と、野党第一党「共和民主党」の石井は考えて居た。

 科学者の林は、「あ、バッテリーのメンテナンスを忘れてた」と、国会中継を見ながら思っていた。松元がアンドロイドなのは、林のみの秘密であった。