2020年5月1日金曜日

地底の跫音<前編> ~エアコミケ、例大祭用~

 エアコミケ用に掲載する東方二次創作小説、「地底の跫音」<前編>です。
 今年中には中編、後編も。

 イラスト:りお様






<想いが言葉に変わるとき>
 春。
 土の下で埋もれていた草木は芽を出し、鎧みたいなつぼみに包まれていた花はつぼみを脱ぎだす。動物たちもそれに応えるかのように顔を出し、人間たちは花の下で酒池肉林の騒ぎをする。妹もペットたちも、仕事がない時はこの時期は屋敷を離れる事が多い。誰もが浮かれるこの季節、私は陰鬱な気分になる。浮かれている騒ぎに参加できていない自分に寂しさを感じるのもあったが、何よりも…。
「空いる!?」
 バカでかい声。「またあの天人か…」と思い、居留守を使おうか私は考えたけど、足音は徐々にこっちに近づいてくる。
「さとり~、空いる!?」
「仕事中よ」
 私は一言言うと、また書類に目を通した。燐によると、マグマの温度がなぜか急激に上昇して居るとのこと。尤も、直ぐに噴火につながる程の上昇ではない。
「ふーん、マグマが上がってるのねぇ」
「勝手に見ないで!」
「はいはい、見て良い?」
「ダメに決まってるでしょう!?」
「いいじゃん~減るもんじゃないし」 
 鬱陶しい。私は何も言わず、書類に目を通していた。しかし、あいつは書類の後ろから目を合わせてこようとする。そして、
「ほんとに書類見てるのかしら?」
 と言ってきた。私は椅子を廻し、あいつに背を向けた。
「優しいわね、叩かないの」
 あいつはそう言い、私の肩に両手を置いた。そして、すぐに離れ、本棚の傍の椅子に腰を掛けた。私は気にせず、仕事を続けようとした。しかし、あいつがいるという事実は、私の集中力を根こそぎ奪うのに十分であった。そして、直ぐに
「しかし悲惨よね、あんた。私のように確信犯的に嫌われてるんじゃなくて、こんなに良い奴なのに嫌われてるもんね~」
 と言って来た。
「うるさい」
 本当にこいつは…。なんで空はこんなのと仲良いのかしら。
「気にしてるの~、あれあれ~。地底の主が地上の奴らみたいに好かれる嫌われるなんて事気にしてるの~?」
「してないわよ。ただ、あなたは大嫌い」
 私は顔も見ずに吐き捨てた。
「へー、でも私はあんた好きよ。こーんな可愛いもの」
 こいつはそう言うと、私の傍に来て、顔を親指と人差し指でなぞった。私はこの天人の手をはたいたが、やめない。
「まあいいわ。空帰ってくるまでここで待ってよーと」
 そう言い、あいつはまた椅子に座った。私は流石に我慢できなくなり、普段出さない大声を出した。
「出てけ!」
 私はインク瓶を手に取ったが、あいつに当てても答えないし、床が汚れるだけなので、投げるのをやめた。幸い、あいつは何も言わず出て行ったが。
「あら、お香…驚かせちゃったわね。ごめんなさい」
 事実、虎の香は怯えていた。この子、虎なのに荒々しさがない優しい子だから、私の怒る姿を見せたくなかったのに…あいつさえ来なければ。私はそう考えながら、そっとお香を撫でた。そして、仕事をする気もなくしたので、そのままお香に体ごともたれ、気がついたら眠っていた。お香も、私がもたれる事が心地良いということで、怯えはいつの間にか消えて、眠っていた。うとうとしながら、仕事中ということで流していたクラシック音楽だけが部屋の中で小さく響いていた事に気が付いたけど、消すのも面倒くさいし、何より忘れていた感情が蘇りそうなので、そのまま流し続けていた。

 小一時間程眠った後、私は目を覚ました。そして、さっきの出来事を思い出しながら、「あいつ…なんで『思ってる』事を簡単に言葉にできるのかしら」と、少し羨ましくなり、その感情を振り払うかのように首を振った。でも…人間や賢い妖怪たちとも違い、あいつは「思い」と「想い」が一致しがちなのよね。

<クロエ> ※新緑という意味もある
 春。
 土の下で埋もれていた草木は芽を出し、鎧みたいなつぼみに包まれていた花はつぼみを脱ぎだす。動物たちもそれに応えるかのように顔を出し、人間たちは花の下で酒池肉林の騒ぎをする。こいし様やお空達も、仕事がない時はこの時期は屋敷を離れる事が多い。誰もが浮かれるこの季節、あたい、火焔猫燐もそれらに漏れず、浮かれていた。春先の死者は、陰鬱な冬の死者に比べると幸せに死んでいった人たちが多いから、会話も楽しい。他の人間、妖怪、猫達も浮かれ気分でいるので、そっちとの会話も楽しい。今日も、雪の合間から出てきた新緑を観察しながら、野良猫たちと会話していた。すると、突如新緑の下から死者の魂が出てきた。私は少し驚いたが、会話してみると気がついたら木の下で死んでいたとの事。これも、春になるとよくある事だから、あたいは驚きもしない。
「しかし意外でしたよ。死んだ瞬間、痛みは感じなくなって、体の重さからも解放されたんですから」
「死んだ人は皆そう言うんですよね。ただ、そこに至るまでは恐怖を感じるんですけどね」
「だけど、もう踊れないってのは辛いですね。私は踊りを教えてたんですけど」 
「踊り?」
「ええ、実は…」
 お姉さんはこの辺りではまだ広まっていない「ワルツ」という踊りの先生になろうとしてたけど、一度教えただけでいつの間にか死の国へ旅立つ事になったとのこと。この踊り、単調なリズムで、踊りも難しくはない、楽しい踊りだというけど…。
「先生って難しい事を教える人ですよね。なんで先生になったんですか?」
「誰も知らないものだったからですよ。ただ…私はもう肉体がないから…もし良かったらでいいので、一回私の言う通りに踊ってみてくれますか?」
「いいですよ」
 あたいは返事したものの、一旦周りを見渡した。人前で音もなく踊るのは流石に恥ずかしいと思ったからだ。だけど、今は猫達しかいない。あたいは両手を曲げ、ステップを踏み始めた。1、2、3のリズムの繰り返しで動くこの踊りは単純だけど、音楽に合わせて二人で踊ったら楽しいんだろうなと感じた。
「素晴らしい。初めてなんですか?」
「ええ、今知った踊りだから」
「いえいえ、そうは見えないですよ」
 お姉さんは心底感心したみたいで、魂になってもそれが伝わって来た。
「えーと、お名前は何ていうのですか?良かったらお願いしたいことがあるんで」
「あたいは火焔猫燐と申します。お願いとは?」
「火焔猫さん。良かったら、私の代わりにワルツを広めてもらえないですか?意思疎通ができれば、教えられるし」
 魂になっても熱意は伝わる。お姉さんは本気だ。あたいは本気で頼まれたら断るのは苦手なので、
「あたいは肉体があるから…下手かもしれないけどやってみます」
 と答えた。軽く逡巡はしたが、筋は褒められたし、どうにかなるだろう。あたいの足元に居る猫達は、新緑に隠れるように眠りこけていた。猫達が寝てる間、あたいはお姉さんからワルツについて色々教わる事にした。とりあえず、今日は理念と基本的な事だけ。出来ればステップも覚えたかったけど、突如降って来た春の雪に阻まれた。

<素晴らしい嘘>
 天子と空は、チェス板を囲み互いに向かい合っていた。天子は板の下に置いてある駒を取り出し、並べた。そして、「ほら、あんたから」と言い、空に白い駒を動かすよう促した。空は言われるがまま、右端から二つ目のポーンを前に動かした。天子は、点対称となるポーンを動かした。
「ナイトはそんな動きはしないわよ」
 天子はナイトを前に動かした空に言った。空は「なるほど」と言い、その右真横に動かした。天子は「それもない」と言い、動きを説明した。
「ナイト難しいね」
「まあね。あんたバカだから中々覚えないけど、他大体覚えたんだし、やってくうちにどうにかなるわよ」
 天子はそう言いながら、ナイトを動かした。キングとナイト、ポーンのみでやっていたが、空が三度チェックをかけられており、チェックメイトになりそうな動きをする度に「それじゃ終わるわよ」と咎めていた。しかし、空が天子にチェックをかけ、そのままチェックメイトした。
「あんた、たまに奇襲して侮れないわよ」
「いやいや天子ちゃん手ごわかったよ」
 二人はそう言い、笑いあった。損得もなければ遺恨もない相手同士だからこそ、互いに裏の感情抜きに笑い会えるのであった。
「そういえばあんたの主人、ちょっと顔色悪かったわよ。あんな良い主人いないんだから、大切にしなさいよ」
 天子は空に言った。空は「もちろん」と一言答え、頷いた。
「さーて、チェスも終わったし温泉だ。ふやけるまで浸かるわよ~」
「ふやけたら大変よ。皮膚がふやけると摩擦力が五倍になって、怪我とか損傷が起こるから」
「あんた良く知ってるね」
 天子は素直に感心した。空は妙な知識があったり、誰も気づかない事に真っ先に気付く面があり、内心「ただのバカじゃない」と実感していた。

 脱衣所で長い髪を結い、服を脱ぎ、手ぬぐいを持ち、洗い場で体を洗い、二人は湯船に浸かった。
「うぇぇぇぇい」
「おっさんみたい」
 天子のわざとらしいうなり声に、空はそう指摘して笑い合った。地底特有の黒い空を仰ぎ見ながら、空は天子に
「だけど、最近なんで天子ちゃんこっちに来るの?地上や天界に比べて、薄暗いだけの世界じゃないの」
 と尋ねた。
「旧地獄だって、そりゃ太陽も見えないし、空気も淀んでるけど、温泉もあるし良いじゃない。地上の奴らは天界と天国ごっちゃにしてて、未だに憧れてる奴多いけど、太陽は近いし空気は綺麗だけど、食べ物はほとんどないし温泉もないからね」
「えー、ここは暗いから、地上や天界の明るさが羨ましいわよ。ただ…地上もここも、きっと天界も、自分がいない場所に理想郷があるって嘘を信じてるのかもしれない」
 空の指摘に、天子は少し黙り、そして
「まあ、そんなものかもしれないわね。でも…そういう嘘は大事かもしれない。今いる場所が一番いいって事くらい退屈なものはないから」
 と言い、湯船の中で伸びをした。
「じゃ、私出るね」
「相変わらず早いわね。私はもう少し居るけど」
 直ぐに出て行く空を見て、天子は相変わらず烏の行水だと思って居たけど、まあ実際地獄鴉だから仕方ないわねと考え、再度伸びをした。
「よ!」
 湯船から突如出てきた存在に天子は一瞬驚き、「おおぅ」と呟いた。しかし、その正体が古明地こいしだと分かり、こいしの背中を叩いた。
「あんたまたそんな所から出てきて」
「潜水で何分出来るかやってたんだよ。ただ、時計ないから何分か分からないこと今思い出した」
「あんた別に何時間でも出来るでしょうよ」
 そう言い、笑いあった。
「だけど、天子ちゃんは私が見えるんだね」
「むしろコツ掴めば誰でも見えるのよ。地上の石ころだって、見えないわけじゃないんだし。大体、見えるんだけど見えてない存在なんて山ほどあるし、あんた程可愛くて個性的なら気になるって」
「くぅー、そう言ってくれるの天子ちゃんだけだよ」
 こいしは泣き真似して、天子の肩をポンポン叩いた。
「そうそう、温泉のこの糸登ってくと、地上に出るみたいだって。最近出来たみたいよ」
 こいしはそう言い、糸を伝って登って行った。
「芥川龍之介の蜘蛛の糸じゃないんだから。あと、裸で地上行ったらあんたのお姉さん壊れるわよ」
「大丈夫大丈夫。ふつーの人は見えてないんだろうし、私の事」
 こいしは天子の忠告も聞かず、登って行った。
「やれやれ。わんぱくね」
 天子はそう言いながら、大きく揺れる糸をじぃっと見ていた。そして、大きな物体が眼前に落ちてきて、再度天子は「おおぅ」と呟いた。
「やっぱ登り切れなかったよ」
 こいしはそう言い笑った。
「だって上にあるの土とか岩ばかりだからそうなるって」
 天子はそう言い、笑った。
「やっぱ嘘だったんだね。噂は信用できないね」
「噂はそんなもんよ。あんたのお姉さんだって、実際は凄い優しい良い奴じゃない。地上とかじゃ極悪人みたいに言われてるけどね」
「でも心読めるのは本当だから嫌われてるんだよね~」
 こいしはそう言った後、湯船から出て行った。天子も続くように湯船から出て、脱衣所に向かい、着替え始めた。空は入れ替わるように入り、風呂場の掃除を始めた。天子も「あんただけにやらすの難だから私も手伝う」と言い、風呂場に入って行った。

<Dialogue>
 あたいは、仕事後に、自室でお姉さんからワルツを教わっていた。
「今日は基本的なステップを教えます」
「はーい」
「1で片方の足を前又は後ろに開き、2でもう片方の足を横に開いて、3できれいに両足を閉じます」
「1で前、2で横…で閉じる…と」
「これをリズミカルにやるのがステップの基本です。1、2、3で」
「なるほど…ちょっと練習が必要ですね」
「慣れれば大丈夫ですよ。あとは、基本的なターン。元々は男女でやるものだったので二つあるので二つ教えます。今は同性でやっても良いものなんですが。そして、いずれにしろ二人でやるものだからもう一人いれば良いのですが…」
「うーん。まあまずはイメージ掴むためにあたいだけやってみます」
「では、元来男性側がやってたものから。1のときに右足 壁斜めに面して前進、反胴運動、右回転を始め、1 の終わりでライズを始めます。ライズとは、かかとを上げることです」
「これでいいですか?」
「うーん、まだぎこちないですけど、理屈は大丈夫なので慣れましょう。次は2。左足を、中央斜めに背面して横へ、その間で四分の一右回転、ライズは継続して下さい」
「はーい」
「で、右足を逆時計周りに動かして左足側に、その間で八分の一右回転、ライズは継続して、3の終わりでロァー、つまりライズを終わらせてください」
「はーい。これですか?」
「うーん、右回転行き過ぎですね。まあ、とりあえずこれを何度かやって慣れましょう。えーと、燐さんでしたっけ?」 
「ええ。ただ、お燐と呼んでもらえると嬉しいです」
「お燐さん。動きはとても上手ですよ。初めてでここまで出来るの中々いないので」
「有難うございます」
 多分あたいを必要としているのは、このお姉さんだけではない。だけど、この言葉で改めて自分が必要だと感じられて、とても嬉しく感じた。誰かに必要とされる事程嬉しい事はそうはないから、あたいは頑張ってワルツを覚えようと思った。
 ターンの練習が一息ついた頃、あたいは聞いてみた。
「そういえば、ワルツを教えてたって、どんな人にですか?里の人間たち?」
「ええ。半分くらいは。他にも楽しい事が好きな妖精達や、意外な所だと紅魔館の吸血鬼も」
「え?」
 まさか紅魔館当主が興味を持っていたとは。好奇心はかなり高いとは聞いていたけど、何をするつもりだったんだろう。
「では、次はもう一つのターンを。体力は大丈夫ですか?私は肉体がないから疲れ感じないですが」
「大丈夫ですよ。そんなヤワじゃないから」
 しかし、もう一つのターンを覚え終わった頃は、既に夜明けの時間になっていた。地上では空が青くなっている頃だし、地下でも空の作った太陽があたいの顔を照らし始めていた。

※5/17 追加
<太陽の瞬き>

 地底には自然に出来た太陽はない。しかし、異変以後は空がさとりと相談して作った小さな人工太陽があり、そこの下では草木や農作物が育てられていた。地底に植物は自生しておらず、ここにあるのは元来地上の種や苗であったが、さとりやペットたちの世話の甲斐もあり、地上の自生する植物以上に力強く、青々しく育っていた。
 朝、さとりは太陽の下の植物に水をまいていた。心も脳も存在しない植物の気持ちは、読心術を以ってしても分からない。だからこそ彼女は楽だと感じていた。理解し合えるペットたちでさえ、心を常に読むという事は非常に疲れる。だからこそ、無心に世話の出来る植物の存在は彼女にとって安らぎとなるのだ。しかし、偶に心の声が聞こえる事がある。
「あら、虫が」
 虫には心がある。彼女は虫を避けるように、植物の根に水を与えていた。虫の思考は単純なので、彼女は邪魔には思って居ない。しかし、
「おーーーす、さとり!」
 という、突如聞こえてきた比那名居天子の声が、彼女の心地よさを台無しにした。無視しようと思ったが、天子は遠慮なく近づいて来た。
「なんか、ここ最近寒くなってない?」
「知らないわよ」
 さとりは憮然と返したが、事実、天子の指摘通り数千度あった人工太陽の表面温度が数日前から千度を切る程に下がっており、それに比例するかのように旧地獄の温度も下がっている。
「寒いですね、ここ」
「大丈夫。温泉で暖かくなるわよ。お風呂なんて久しぶりでしょあんた?」
 天子は、貧乏神の依神紫苑を連れていた。
「ということで、お風呂行ってきまーす」
「ちょっと待て、どなた?」
 さとりは、天子の隣に居る存在に気付いた。紫苑は何も言わず、ただ頭を下げ、天子は、
「貧乏神の依神紫苑よ」
 と言った。
「び、貧乏神!?」
 さとりは露骨に嫌がり、怯える顔をした。紫苑は小さく「すみません」と言い、天子は
「大丈夫。今は力使ってないし、屋敷は貧乏にならないって。ただ、変な事したら家傾くかもね」
 と言い、ニヤリと笑った。さとりは何も言い返せなかった。そして、自身の無礼な反応と、ボロボロの服を着た紫苑を不憫に感じ、自室のクローゼットに駆けて行った。そして、ハンガーの上着とロングスカート、引出しの下着上下を持出し、風呂場に行き、紫苑に対して、
「古着だけど良かったらどうぞ」
 と言い、服を渡した。紫苑は泣き出し、
「有難うございます、有難うございます」
 と何度も言った。
「あらあら、優しいのね」
「貴方にはないわよ」
 さとりはそう言いながらも、紫苑に対して何とも言えない罪悪感を感じていた。衣服も食べ物も大きな部屋も当たり前にあるものではない。しかし、当たり前に享受しているのであれば、それは自分や身内だけで独り占めするものではなく、少しずつ広げていくべきなんじゃないか。そんな逡巡を二人に悟られないよう、さとりは風呂場から離れ、再度植物の傍に向かった。
 植物の傍に到着すると、さとりは改めて寒くなっている事を身をもって感じた。ここの植物にとっては、多少の寒暖の差はあった方がよいと彼女は考えてはいたが、また暖かくなるという保証はない。空にどう言えば地底の太陽の力を強めることが出来るのか。葉の裏で震える虫を見ながら考えて居たが、なにも浮かばなかった。地底の太陽は一瞬だけ暗くなり、再度光を放った。常に強い光を放つ地上の太陽よりも地底の太陽は儚い。さとりは、そのうち地底から出て行くことも考えないと行けないのかもしれないと考えても居た。「自分たちが居なくなったら、誰がここの管理をするのだろう」という考えも伴いながら。その逡巡は、彼女の心を曇らせ、弱い太陽の光を更に弱くしているようであった。さとりは、これは弱ってるのではなく、瞬きしているだけ、瞬きは必要なことだから仕方がないと自分自身に言い聞かせ、サードアイを瞬きさせた。


Spetial thanks 古明地洋哉(孤独の音楽)

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